トム・ハレルとブラックニッカな夜
僕は日本のレトロなウイスキーが好きです。サントリーの角瓶、そしてニッカのブラックニッカ。特にブラックニッカには想い入れがある。女手一つで僕ら兄弟を育ててくれた亡き母がいつも夕飯の卓上にこのブラックニッカを置いて飲んでた。

今夜はブラックニッカな夜です。最初はハイボールで、そして続いてロックで。特にこのブラックニッカは1965年発売から40年が経過した2005年に40周年記念ボトルとしてリリースされたスペシャル物。
12年物のモルトと、そして19世紀初頭にスコットランドで開発され今では超希少価値なカフェ式連続蒸溜機を使って造られた12年物のグレーンウイスキーのブレンドで造られてる。
ほの甘い麦の香り、柔らかい口当たり、華やいだ空気感、どれも昭和の高度成長期を彷彿させる素敵なもの。猛烈サラリーマンがモテハヤされた時代。
僕の父もそんな猛烈サラリーマンを演じ37歳で過労死してる。その件で後年出版された書籍に父が実名で出ていてビックリしたのを想い出す。そんな時代のウイスキーです。

右手に大麦の穂を、左手にウイスキーのテイスティング用グラスを持つ黒髭のオジサンはキング・オブ・ブレンダーズと呼ばれ、17世紀の冒険家ウォルター・ローリーがモデルとも言われてる。
そして実は40年の歴史の中では、右向きと左向きの2種類が存在したらしい。今はこの1種類のみ。

そんな心の病と裏腹に、いや、そういう内向性があるからこそかもしれないけど、実に深い音を出す。
僕の敬愛するジャズピアニスト、ビル・エヴァンスの遺作となる「ウィ・ウィル・ミート・アゲイン(We will meet again)
」に参加し一躍有名になったんだけど、このアルバムは死期迫るビル・エヴァンスの究極の恥美が描かれた作品。その流れの中でのトム・ハレルは実に深く、そして美しい。僕の愛聴盤です。ぜひ皆さんにも聴いてもらいたいな〜

今夜のラビリンスもいい作品です。テナーサックスのドン・ブラッデンとのハーモニーが最高にエキサイティング! 1曲目、「サンバ・マテー」のエンディングなど、ぶっ飛ぶ感じ。
バラードも最高です。美しきエロスを感じる作品。
作家でも天才と精神の病はよくある組み合せ。心の恥美を描けるような人って、きっと心と頭の構造が僕ら凡人とは違うんだろうね。

トム・ハレルの演奏があまりに美しく、ワインも開けちゃった。スペインはフランスとの国境近いペネデスのワイン、Bodegas Pinord社の『CLOS de TORRIBAS 2005』。実にテンプラニーリョらしいスペインのワインです。150年の歴史があるワイナリーらしく、初期の頃の広告がBodegas Pinord社のWEBに出ていた。
レトロな感じのワインで益々トム・ハレルの深みにはまり込むような演奏が魅き立つ。
今夜はブラックニッカとトム・ハレル、そしてBodegas Pinord社のCLOS de TORRIBASに酔う夜です。

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